お金について「知る」「考える」「行動する」

「１＋１＝２」、あるいは「『資本論』を書いたのは誰？」といった「ａ＝ｂ」が成り立つ勉強であればラクなのですが、お金に関してはそうもいきません。
先ほども書いたように、１００円の価値は人によって、また、フトコロ事情によっても変わりますし、「マイホームは買うべきか、賃貸がいいか」といった問いについても、絶対的な答えはないからです。

そこで必要なのが、「お金の勉強」です。
安心してください。社会人になったばかりのみなさんであれば、まだまだ大丈夫。今のうちにしっかりと勉強をすれば、お金の正しい考え方や使い方、将来設計をするためのお金との付き合い方といった「お金の教養」を、十分に身につけることができます。
でも、実際にはどんな勉強をしたらいいのか知っている人は少ないでしょう。両親も、祖父母も、学校の先生も、誰も教えてくれなかったのだから当然です。

そこでまずは、お金の教養を身につけるとどんないいことがあるのかを把握しましょう。日々の生活や仕事において、どんなふうに役立つのかわかっていたほうが、勉強に身が入るからです。
自分の生き方、価値観を明確にし、自分で考え行動する力を養うことにもつながるお金の教養は、次の４つの分野で活きてきます。

お金の勉強は４つの分野に活きてくる

「生活設計・家計管理」
「経済や金融の仕組みを学ぶこと」
「（お金に関わる）トラブル防止」
「キャリア・人格形成」

逆にいえば、この４つの分野を重点的に勉強すべきだともいえます。

「お金の教養」は
４つの分野に活きてくる

• ①生活設計・家計管理

  まずは生活設計を考えて、それを実現するための家計管理、貯蓄、資産運用の方法を考えていくことで、これからどのような暮らしをしたいのか、いつ頃何をしたいのかによって必要なお金や準備の仕方を変えることができるようになる。家計管理においては、欲しいものと必要なものを区別して、自分にとって価値あるものに多くのお金が使えるようになる。それにより自ら資産形成をしていく力が身につく。

• ②経済や金融の仕組みを学ぶこと

  経済の仕組みや世の中の大きなお金の流れを学ぶことができる。お金の働きや金融機関の役割、景気と物価、金利、株価との関係、間接金融と直接金融などを理解し、それらが社会や私たちの生活にどうかかわっているのかについても考えることができるようになる。

• ③（お金に関わる）トラブル防止

  お金やものの大切さを知り、お金とのつき合い方を日頃から考える習慣を身につけることができる。一方で、金利の重さや多重債務に陥った人の現状を知り、安易な借入を避けること、金融トラブルの実態を知り、巻き込まれないような態度を身につけることも学べる。

• ④キャリア・人格形成

  ①～③に関する学びを通じて、よりよい社会を築くために自分に何ができるのかを考え、実行していく力を養うことができる。それが社会人としての理想のキャリア形成、ならびに人格形成へとつながっていく。

お金の勉強を通じて、生き方も価値観も明確に！

お金の勉強は、生活費を切り詰めることや、ラクをして儲けることを考えるものではありません。
お金や金融の役割を理解し、それらが自分の生活や社会にどのようにかかわっているのか、どう活かしていけばいいのかを考えるのがお金の勉強であり、これを通じて、自分の生き方、価値観を明確にしていくものです。

生き方や価値観が明確になることで、より豊かな生活やよりよい社会づくりのために、自ら判断し行動していく原動力にもなっていきます。
単に知識を増やすだけでなく、お金の教養を「知る」「考える」「行動する」という３つにつなげることで、お金の勉強が実生活に活きてきます。

ただし、価値あるものほど簡単には手に入らないのが世の常。はじめのうちは「知る」だけでも大変なことです。
みなさんの中には、すでに投資で損をした人もいるかもしれません。貯金をしようと思ったけどできなかったという人もいるでしょう。マンガ『スラムダンク』の安西先生の「あきらめたらそこで試合終了」という名言ではないですが、もしたった一度の挫折で止めてしまえば、そこでおしまいです。
私は失敗からしか学べないこともたくさんあると思っています（私自身、失敗から多くを学んできた人間ですので）。
トライ＆エラーを繰り返し、経験を増やしていくことは、「お金の教養」を高めるうえでは、欠かすことのできないことでもあるのです。

▶︎【CHAPTER1-⑤】お金が持つ３つの機能について知ろう